中国×日本 比較文化シリーズ【第18回】美意識と身だしなみ:「素顔」vs「ナチュラルメイク」の哲学
大家好、みなさん、こんにちは!
今回は外見や美意識についてです。何を「美しい」と感じるか、どう装うか。美の基準は文化によって驚くほど異なり、そこには深い価値観の違いが隠されています。

「白富美」:中国の理想の美女像
中国で理想とされる女性像を表す言葉が「白富美(バイフーメイ / báifùměi)」です。
白富美の意味:
- 白(バイ / bái) - 肌が白い
- 富(フー / fù) - 裕福
- 美(メイ / měi) - 美しい
この順番が重要です。中国では「一白遮三丑(イーバイジャーサンチョウ / yī bái zhē sān chǒu/肌が白ければ三つの醜さを隠せる)」という諺があるほど、肌の白さが最優先されます。
中国の美白文化:
- 日傘、アームカバー、フェイスマスクで完全防備
- 美白化粧品の市場が巨大
- 「黒い=労働者階級」という歴史的イメージ
- 日焼けは極力避ける
- ビーチでも完全武装!?
これらの傾向は現代中国社会で広く見られますが、近年は徐々に多様な美の基準も受け入れられつつあります。
日本の「透明感」という美意識
日本の美の基準は少し違います:
日本の美意識:
- 「透明感」「清潔感」が重視される
- 白すぎず、健康的な肌
- ナチュラルメイクが好まれる
- 「すっぴん風メイク」という高度な技術
- 「作り込みすぎない」美しさ
日本人女性は「化粧していないように見える化粧」に時間をかけます。中国人から見ると「なんでそんなに薄く塗るの?」「もっとちゃんとメイクしたほうがいいよ」と不思議に思われることもあります。
「浓妆」vs「薄化粧」
中国:はっきりメイク
中国の都市部では「化妆(ホワジュアン / huàzhuāng/メイク)」がしっかりしています:
- 濃いめのアイメイク
- 真っ赤な口紅
- くっきりとした眉
- 浓妆(ノンジュアン / nóngzhuāng)=「メイクしている」ことが明確
- 美肌アプリで加工も当たり前
「素颜(スーイエン / sùyán/すっぴん)」で外出することは、「手抜き」「相手への敬意が足りない」と感じられることも。
日本:引き算の美学
日本のメイクは「足す」より「引く」:
- 薄づきファンデーション
- ナチュラルなアイメイク
- ほんのり色づくリップ
- 「気づかれない美しさ」
- 「すっぴんが綺麗」が最高の褒め言葉
ただし、TPOによってメイクを変える繊細さもあります。
「整容」:美容整形への寛容さ
中国:急成長する美容整形市場
中国では「整容(ジョンロン / zhěngróng)」「整形(ジョンシン / zhěngxíng)」への抵抗が薄れています:
- 大学入学前に二重整形、鼻を高くする手術
- 親が娘に整形をプレゼント
- 「綺麗になるのは良いこと」という価値観
- 韓国への美容整形ツアー
- SNSで「before/after」を堂々と公開
「美丽是资本(měilì shì zīběn/美しさは資本)」という考え方で、就職や結婚のために整形することが理解されています。もちろん「整形顔」への否定的な見方も一部にはありますが、若い世代では一般的になりつつあります。
日本:隠す文化
日本でも美容整形は増えていますが:
- 公表しないことが多い
- 「自然に綺麗になった」ことにする
- 整形を批判する声もある
- 「ありのままの美しさ」という理想
- でも実際はプチ整形は普及している
「整形した」と言うと、批判されたり「本当の顔じゃない」と言われることがあるため、隠す人が多いのです。近年はカミングアウトするインフルエンサーも増えていますが、まだ「隠す文化」が主流です。
「网红脸」:量産される美人顔
中国で問題になっているのが「网红脸(ワンホンリエン / wǎnghóng liǎn/インフルエンサー顔)」です。
网红脸の特徴:
- 大きな目、高い鼻
- V字の小顔
- ぷっくりした唇
- みんな同じような顔
- 美顔アプリで加工しすぎて個性がない
「锥子脸(ジュイズリエン / zhuīzǐ liǎn/錐のような尖った顎)」が流行し、多くの女性が同じ整形をした結果、「誰が誰だかわからない」という現象も。
日本:「個性的な美しさ」の尊重
日本では最近、多様な美が認められつつあります:
- 「ブス可愛い」という概念
- 個性派美人、キャラクター性
- 「みんな違ってみんないい」
- ただし、一方で「アイドル顔」の画一化も
完全に多様性が認められているわけではありませんが、中国ほど「同じ顔」になる現象は少ないです。
「身材管理」:体型へのこだわり
中国:「A4腰」「反手摸肚脐」
中国のSNSでは定期的に「身材チャレンジ」が流行します:
- A4腰(A4ヤオ / A4 yāo) - 縦にしたA4用紙(幅21cm)に隠れるほど細い腰のこと
- 反手摸肚脐(ファンショウモードゥーチー / fǎn shǒu mō dùqí) - 背中から手を回してへそを触る(痩せている証明)
- 锁骨放硬币(スオグーファンインビー / suǒgǔ fàng yìngbì) - 鎖骨にコインを乗せる(鎖骨がくっきり)
- 「瘦成一道闪电(shòu chéng yī dào shǎndiàn/稲妻のように細くなる)」という表現
- 「白瘦幼(バイショウヨウ / bái shòu yòu/白くて、痩せてて、幼い)」が理想
健康を度外視した極端な痩せ願望が問題になっています。最近は「健康美」を求める声も出てきていますが、依然として痩せ志向は強いです。
日本:「ぽっちゃり」も許容範囲
日本でも痩せ願望は根強く、ダイエット産業も巨大ですが:
- 「健康的な体型」が好まれる
- 「細すぎる」への批判もある
- 筋肉をつける「筋トレ女子」ブーム
- 体重より「見た目」「体のライン」
- 「ダイエット」は永遠のテーマだが、中国ほど極端ではない
日本のグラビアアイドルは、中国の美の基準からすると「太っている」と見なされることもあります。
「潮」:ファッションセンスの違い
中国:大胆でゴージャス
中国の若者のファッションは「潮(チャオ / cháo/イケてる)」を追求します:
- 派手な色、大胆なデザイン
- ブランドロゴが大きく目立つ
- 高級ブランドへの憧れ
- 「国潮(グオチャオ / guócháo)」 - 中国ブランドのストリートファッション
- SNS映えを意識
- 「目立つこと=おしゃれ」
経済成長とともに、「見せる消費」が好まれます。
日本:控えめで洗練
日本のファッションは:
- シンプル、ミニマル
- モノトーン、落ち着いた色
- ブランドロゴは控えめ
- 「さりげなさ」「こなれ感」
- 「人と違う」個性的なおしゃれ
- 「引き算のおしゃれ」
日本人は「ブランドバッグを持っていても主張しない」美学がありますが、中国人は「せっかくのブランド、見せなきゃ意味ない」と考える傾向があります。
「颜值」:顔面偏差値という概念
中国で頻繁に使われる言葉が「颜值(イエンヂー / yánzhí/顔面偏差値)」です。
颜值文化:
- 「颜值高(イエンヂーガオ / yánzhí gāo)=美人・イケメン」
- 「颜值即正义(yánzhí jí zhèngyì/美しさこそ正義)」という言葉
- 外見を数値化して評価
- 美顔アプリで「颜值测试(yánzhí cèshì/顔面偏差値テスト)」
- 外見が就職や人間関係に大きく影響
かなり率直に外見を評価する文化です。
日本:「外見至上主義」への批判
日本でも外見は重要ですが:
- 露骨に外見を評価することは「失礼」
- 「内面が大切」という建前
- でも実際は「美人は得」という現実
- 「ルッキズム(外見至上主義)」への批判
- 外見を数値化することへの抵抗感
表面的には「内面重視」と言いながら、実際は外見も重視される、という矛盾があります。
男性の美意識:「小鲜肉」vs「草食系」
中国:「小鲜肉」ブーム
中国で人気の男性像が「小鲜肉(シャオシエンロウ / xiǎo xiānròu/若くて新鮮な肉=若いイケメン)」です:
- 色白、中性的
- 化粧する男性も増加
- K-POPアイドル的
- 「娘炮(ニャンパオ / niángpào/女々しい)」という批判も(※非常にストレートな表現で差別的ニュアンスを含む)
- でも若い女性には大人気
ただし「過度な中性化」を問題視し、「男らしさ」を求める動きもあります。
日本:「草食系」から「筋肉」へ
日本の男性像も変化しています:
- かつては「草食系男子」が話題
- 最近は「筋トレブーム」
- 美容に気を使う男性増加
- 「メンズメイク」も普及
- でも「やりすぎ」は引かれる
中国ほど極端に中性的ではなく、「ナチュラルなイケメン」が好まれます。
美顔アプリ:「美图秀秀」の世界
中国の写真文化で欠かせないのが「美图秀秀(メイトゥーシウシウ / měitú xiùxiù)」などの美顔アプリです。
中国の写真加工文化:
- 顔を小さく、目を大きく、肌を白く
- 自動的に美化される
- 加工していることはみんな知っているし、当たり前
- 「照骗(ジャオピエン / zhàopiàn/写真詐欺)」という言葉
- でも実物と違っても問題なし
「网上我很美(wǎngshàng wǒ hěn měi/ネット上の私は美人)」は笑い話になるほど。
日本:「盛る」文化と「詐欺」の境界
日本でも加工はしますが:
- 「やりすぎ」は批判される
- 「実物と違う=詐欺」という認識
- 「自然に盛る」テクニック
- プリクラ文化(でも実物との差に驚く)
- SNSでは加工するが、限度がある
中国ほど大胆には加工せず、「バレない程度」を心がける人が多いです。
言語学習のヒント
美容・ファッションに関する中国語は日常会話で頻出です!
中国語の美容・身だしなみ関連表現:
- 颜值 (yánzhí) - 顔面偏差値、ルックス
- 白富美 (báifùměi) - 色白で裕福で美しい(理想の女性)
- 高富帅 (gāofùshuài) - 背が高くて裕福でハンサム(理想の男性)
- 化妆 (huàzhuāng) - 化粧する
- 素颜 (sùyán) - すっぴん
- 整容 (zhěngróng) - 美容整形
- 美白 (měibái) - 美白
- 减肥 (jiǎnféi) - ダイエット
- 身材好 (shēncái hǎo) - スタイルが良い
- 潮 (cháo) - イケてる、おしゃれ
- 时尚 (shíshàng) - ファッショナブル
- 打扮 (dǎban) - おしゃれする、装う
まとめ
美意識の違いは、その国の歴史、経済発展、社会の価値観を映し出します。
中国は「白さ、はっきりメイク、見せる美しさ、外見の数値化」。
日本は「透明感、ナチュラルメイク、さりげなさ、内面重視の建前」。
中国人の濃いメイクは「派手すぎる」のではなく、それが美の表現。
日本人の薄化粧は「手抜き」ではなく、高度な技術。どちらも美しくなりたい気持ちは同じです。
大切なのは、相手の美意識を尊重すること。中国で「すっぴんで大丈夫?」と言われても、それは批判ではなく心配。日本で「化粧濃いね」と言われても、それは素直な感想。
美の基準は違えど、「自分らしく美しくありたい」という願いは万国共通です。その表現方法が違うだけ。それを理解すれば、もっと豊かな交流ができますね。
【今日の中国語フレーズ】
- 你今天很漂亮 (nǐ jīntiān hěn piàoliang) - 今日綺麗だね
- 你的发型很好看 (nǐ de fàxíng hěn hǎokàn) - 髪型素敵だね
- 你瘦了 (nǐ shòu le) - 痩せたね(褒め言葉)
- 你打扮得真好 (nǐ dǎban de zhēn hǎo) - おしゃれだね
次回は最後のテーマ「言語そのものの違い」について、中国語と日本語の面白い関係をご紹介します。同じ漢字文化圏なのに、なぜこんなに違う?お楽しみに!