中国×日本 比較文化シリーズ【第17回】買い物と消費文化:「砍价」vs「定価販売」の世界
大家好、みなさん、こんにちは!
今回は誰もが日常的に体験する「買い物」についてです。
何を買うか、どう買うか。消費行動には、その国の経済発展段階と文化的価値観が如実に現れます。

「砍价」:値切り交渉は当たり前
中国の市場や小規模店舗で欠かせないスキルが「砍价(カンジャー/値切る)」です。
中国の値切り文化:
- 市場、露店では値札の半額から交渉開始
- 「太贵了!(タイグイラ/高すぎる!)」が交渉の始まり
- 店主との駆け引きを楽しむ
- 買わないふりして立ち去ると「好好好,卖给你!(わかったわかった、売ってあげる!)」
- 値切らないと損という感覚
外国人観光客は最初「ぼったくり価格」を提示されることが多い!?
現地の人なら100元のものが、外国人には500元。だから交渉が必須!
しかしながら、現在は明码标价(価格表示)の店舗も増えており、すべての店舗が二重価格設定をしているわけではありません。また、最近の中国市場は外国人観光客向けの価格統制も進んでいます。
日本:定価販売の安心感
日本では値切ることはほとんどありません:
- 表示価格が最終価格
- 値切ると「失礼」と思われることも
- 「正札販売」という誠実さの証明
- 価格交渉は不動産や車など大きな買い物だけ
- 誰が買っても同じ価格という平等性
中国人が日本に来て驚くのは「値切れない!」ということ。逆に日本人が中国に行くと「最初の価格で買ってしまって大損」ということもあります。
「淘宝」vs「楽天」:ネット通販の違い
中国:淘宝(タオバオ)の巨大生態系
中国のネット通販は世界最大規模です:
- 淘宝(タオバオ) - 個人商店が集まるマーケット
- 天猫(Tmall) - ブランド公式ストア
- 京东(JD.com) - 自社配送で品質保証
- 拼多多(ピンドゥオドゥオ) - グループ購入で激安
淘宝の特徴:
- なんでも売っている(本当に何でも)
- 価格は驚くほど安い
- ライブコマースが盛ん
- チャットで店主と直接交渉
- レビューを細かくチェック
中国人は「淘宝で買えないものはない」と言います。服、家電、食品から、オーダーメイド家具まで。
日本:楽天、Amazon、専門店の併存
日本のネット通販は:
- Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングが三強
- 専門店のECサイトも充実
- 品質重視、偽物は少ない
- 価格は中国より高め
- 配送が早く正確
- レビューは参考程度
日本人は「安心・信頼」を重視し、中国人は「価格・種類」を重視する傾向があります。
「直播带货」:ライブコマースの爆発
中国で近年急成長しているのが「直播带货(ジーボーダイフオ/ライブコマース)」です。
ライブコマースの特徴:
- インフルエンサーが商品を紹介しながら販売
- 視聴者は数百万人
- リアルタイムで質問に答える
- 限定価格、限定時間でプレッシャー
- 「3、2、1、上链接!(リンク貼った!)」で一斉購入
- トップインフルエンサーは一晩で数十億円売る
有名なのが「李佳琦(リー・ジャーチー)」、口紅王子と呼ばれ、彼が「买它买它买它!(買って買って買って!)」と言うと、数秒で完売します。
日本にもライブコマースはありますが:
- まだ発展途上
- 中国ほどの熱狂はない
- インフルエンサーの影響力は限定的
日本人は「じっくり考えてから買う」習慣が強く、「今すぐ買わないと損!」というプレッシャー販売への抵抗があります。
「山寨」:コピー文化の変遷
かつて中国と言えば「山寨(シャンザイ/コピー品)」が有名でした。
山寨の歴史:
- もともとは「海賊版、偽物」
- iPhone のコピー「HiPhone」など
- ブランドバッグ、時計の偽物市場
- 「秀水市场(シウシュイシーチャン)」など観光地化した偽物市場
しかし現在は変化:
- 中国ブランドの品質向上
- HUAWEI、Xiaomi、BYDなど世界的ブランドに成長
- 「山寨」から「创新(イノベーション)」へ
- 偽物への取り締まり強化
- 若者は「国潮(グオチャオ/国産ブランドブーム)」
コピー文化改善傾向にあるが、依然として課題は大きい
日本:「メイド・イン・ジャパン」のプライド
日本は逆の道を歩んできました:
- 戦後は「安かろう悪かろう」
- 高度成長期に品質向上
- 「Made in Japan = 高品質」のブランド確立
- 職人技術への誇り
- 偽物に対する強い嫌悪感
日本人は「本物」「正規品」にこだわり、少し高くても正規品を買う傾向があります。
「双十一」:ショッピング狂乱の日
中国最大の消費イベントが「双十一(シュアンシーイー/ダブルイレブン、11月11日)」です。
双十一の特徴:
- もとは「光棍节(独身の日)」
- アリババが2009年からセール開始
- 深夜0時にカウントダウン、一斉購入
- 事前に欲しいものをカートに入れ待機
- 配送業者がパンク状態
- 翌日は段ボールの山
他にも「618(6月18日)」など、中国は「造节(ゾウジエ/祝日を作る)」で消費を刺激します。
日本:セールは控えめ
日本のセール文化は穏やかです:
- 年末年始、夏のセール
- ブラックフライデー(輸入文化)
- ポイント還元が主流
- 「爆買い」より「必要なものを買う」
- セールでも秩序を保つ
中国の双十一のような「深夜カウントダウン購入」は日本では考えにくいです。
「快递小哥」:配達員は現代の英雄
中国の消費文化を支えるのが「快递小哥(クァイディーシャオグー/配達員のお兄さん)」です。
中国の配送事情:
- 驚異的な速さ - 都市部なら翌日、当日配送も
- 配達員は電動バイクで街中を疾走
- 1日100件以上配達
- 「小区」のゲート前に集積所
- 「丰巣(フェンチャオ)」などの宅配ロッカー普及
- 配達員への感謝と尊敬
双十一の時期は配達員が過労で倒れるニュースも出るほど。彼らは現代中国の消費社会を支える英雄なのです。
日本:丁寧だが配達員不足
日本の配送は:
- 時間指定が正確
- 不在票でコンビニ受け取り
- 配達員は丁寧、制服もきちんと
- しかし人手不足が深刻
- 再配達問題
- 中国ほどの物量はさばけない
「种草」と「拔草」:SNS時代の消費行動
中国の若者の消費行動を表す言葉が「种草(ジョンツァオ)」と「拔草(バーツァオ)」です。
种草(草を植える):
- SNSで商品を見て「欲しい!」と思うこと
- インフルエンサーの投稿で購買意欲が刺激される
- 「小红书(RED)」というアプリが种草の聖地
拔草(草を抜く):
- 実際に購入すること
- 欲しいと思っていたものを手に入れる達成感
中国の若者は「种草→拔草」のサイクルで消費を楽しみます。
日本:「欲しいものリスト」文化
日本人も似た行動をしますが:
- Amazonの「欲しいものリスト」
- Instagram で「保存」機能を使う
- 「ウィンドウショッピング」を楽しむ
- 衝動買いより計画的消費
中国人の方が「種草されやすく、拔草も早い」印象があります。
「退货」:返品文化の違い
中国:気軽に返品
中国のネット通販は返品が簡単です:
- 「七天无理由退货(7日間理由なし返品可)」が基本
- サイズが合わない、気に入らない、全部OK
- 返品送料も店舗負担が多い
- 「先試してから決める」感覚
服を何着も注文して、試着して気に入ったものだけ残し、他は返品、ということもあります。
日本:返品はハードルが高い
日本では返品は例外的です:
- 不良品以外の返品は難しい
- 「試着室で確認してから買う」が基本
- 返品すると「迷惑をかけた」と罪悪感
- 「買ったら責任を持つ」文化
この違いは、「消費者の権利(中国)」と「店への配慮(日本)」という価値観の違いを表しています。
言語学習のヒント
買い物に関する中国語は日常生活で最も使う表現です!
中国語のショッピング関連表現:
- 砍价 (kǎnjià) - 値切る
- 太贵了 (tài guì le) - 高すぎる
- 便宜点 (piányi diǎn) - 安くして
- 多少钱?(duōshao qián) - いくら?
- 打折 (dǎzhé) - 割引
- 包邮 (bāoyóu) - 送料無料
- 快递 (kuàidì) - 宅配便
- 退货 (tuìhuò) - 返品
- 种草 (zhòngcǎo) - 欲しくなる
- 拔草 (bácǎo) - 購入する
- 剁手 (duòshǒu) - 無駄遣い(直訳:手を切り落とす)
- 买买买 (mǎi mǎi mǎi) - 買う買う買う!
まとめ
消費文化の違いは、経済発展の段階と社会の価値観を映し出します。中国は「価格交渉、ネット通販の巨大化、スピード重視、返品自由」。日本は「定価販売、品質重視、丁寧な配送、慎重な購入」。
中国の市場で値切らずに買ってしまう日本人は「カモ」、日本の店で値切ろうとする中国人は「マナー違反」、と言う人もいます。観光地では確かにそのような現象はありますが、現在は明码标价(価格表示)の店舗も増えており、すべての店舗が二重価格設定をしているわけではありません。また、最近の中国市場は外国人観光客向けの価格統制も進んでいます。
大切なのは、その国の消費文化のルールを理解し、適応すること。中国では積極的に交渉し、日本では表示価格を尊重する。この切り替えができれば、どちらの国でも賢い消費者になれますよ。
【今日の中国語フレーズ】
- 能便宜点吗?(néng piányi diǎn ma) - 安くできますか?
- 买一送一 (mǎi yī sòng yī) - 1つ買うと1つおまけ
- 性价比高 (xìngjiàbǐ gāo) - コスパが良い
- 物流很快 (wùliú hěn kuài) - 配送が早い
次回は「美意識と身だしなみ」について、面白い違いをご紹介します。「すっぴん」文化vs「化妆」文化?お楽しみに!