中国×日本 比較文化シリズ【第6回】お金と割り勘の文化
大家好、みなさん、こんにちは!
今回はちょっとデリケートだけど避けて通れないテーマ、お金の話です。
特に食事の後の会計シーンには、文化の違いがはっきりと現れます。

中国の「抢着买单」現象
中国のレストランで食事をした後、ある光景を目にすることがあります。会計の際に複数の人がレジに殺到し、我先にと支払おうとするのです。これが「抢着买单(チャンジャマイダン/会計を奪い合う)」という習慣です。
「私が払う!」「いや、今日は私が!」と、支払う権利を争っているかのよう。日本人から見ると驚くかもしれませんが、これには深い文化的背景があります。
「面子」と「人情」の文化
中国では「誰がおごるか」が人間関係における重要な意味を持ちます。支払い行為は、以下のようなメッセジを伝えます:
支払いを受け入れることは、相手の好意と面子を立てることにもつながります。そして次回は自分がおごる番。この「施し、施される」の循環が、中国の人間関係を深める重要な要素なのです。
特にビジネスシーンでは、接待する側がすべて支払うのが基本ですが、同僚同士でも初対面や特別な機会ではおごり合いが期待されます。
日本の「割り勘」文化
対照的に日本では、「割り勘(AA制)」が公平で気を使わない方法として広く受け入れられていまよね。友人同士や同僚との食事では、「一人いくら」と計算して分けることが一般的です。
これは「相手に負担をかけたくない」「対等な関係でいたい」という気遣いの表れです。おごられることで「借りを作った」と感じ、精神的な負担になることを避ける傾向があります。
もちろん、上司が部下におごる、先輩が後輩に奢るという習慣もありますが、それは「余裕のある者が気前よく」というニュアンスが強く、中国ほどの「義務感」や「争い」にはなりにくい特徴があります。
現代中国の多様化する習慣
現代中国では、状況や関係性によって習慣が多様化しています。
「AA制」の普及:
特に若い世代(大学生や20〜30代の都市部の社会人)の間では、「AA制」が広く受け入れられています。仲の良い友人同士や、収入が同程度の同僚間では、割り勘がごく自然な選択肢です。
「AA制」の語源:
この言葉は中国で普及した外来表現で、「Algebraic Average」の略や「All Apart」から来ているなど諸説あります。重要なのは、この概念が中国の若い世代の間で「公平」と「合理的」の象徴として定着していることです。
残る伝統的習慣:
一方で、以下のような状況では、今でも「抢着买单」が期待されるか、実際に起こります:
年齢や社会的地位に明らかな差がある場合
地域差にも注意:
上海や深センなどの大都市ではビジネス関係でも初対面で割り勘が普通の場合がありますが、地方ではより伝統的な習慣が色濃く残っています。
テクノロジーが橋渡しする新習慣
現代中国で会計文化に革命をもたらしたのが、WeChat PayやAlipayなどのモバイル決済です。
電子紅包を利用した新型割り勘:
幹事が全額を支払った後、参加者がWeChatの「紅包」機能で個別に自分の分を送金する方法が普及しました。これなら表面上は「おごった」形式を保ちつつ、実質的には割り勘という、面子と合理性を両立させた画期的な解決法です。
グループ決済機能:
WeChatやAlipayの「AA收款(割り勘集金)」機能を使えば、幹事が請求リンクをグループに送るだけで、自動的に各人の金額が計算され、個別に支払いが完了します。
失敗しないための実践アドバイス
中国で食事をする場合:
誘った側なら、最初からおごる意思を表明する準備を
誘われた側なら、一度は「我来买单(私が払います)」と申し出る(形式的な場合も多いが、マナーとして重要)
相手が強く主張したら、素直に感謝して受け入れる
「下次我请(次は私がおごります)」と必ず言い、実際に次回実行する
中国人のビジネスパトナーと食事する場合:
立場や状況を判断:接待なら相手が払うのが普通、対等な打ち合わせなら事前に清算方法を確認
大都市の若手ビジネスパーソンなら、最初から「AA制でいきましょうか?」と提案しても失礼にならない場合が多い
日本人同士だけど中国式にしたい場合:
「今日は私がおごります」とはっきり宣言する
相手が遠慮しても「気にしないで」と押し切る
金額が大きい場合は事前に予算を伝えておく
中国人の友人と日本で食事する場合:
事前に「日本ではよく割り勘にするけど、大丈夫?」と文化の違いを説明しておく
相手の文化も尊重し、時にはおごり、時にはおごられる柔軟性を持つ
言語学習のヒント
お金に関する表現は実用的なので、しっかり覚えましょう!
中国語のお金・会計表現:
抢着买单 (qiǎngzhe mǎidān) 会計を奪い合う
我请客 (wǒ qǐngkè) 私がおごります
AA制 (AA zhì) 割り勘
各付各的 (gè fù gè de) 各自払い
下次我请 (xià cì wǒ qǐng) 次は私がおごります
不要客气 (búyào kèqi) 遠慮しないで
分摊费用 (fēntān fèiyòng) 費用を分担する
我来付吧 (wǒ lái fù ba) 私が払いましょう
这次让我来 (zhè cì ràng wǒ lái) 今回は私に払わせて
まとめ
お金の支払い方一つとっても、その背景には深い文化的価値観があります。中国では「おごる」ことで人間関係を深め、面子と人情を表現する文化。日本では「割り勘」で対等性を保ち、相手に心理的負担をかけない文化。
重要なのは、どちらが優れているかではなく、相手の文化的背景を理解し、状況と関係性に応じて適切に対応することですね。
現代では、テクノロジーの進化が伝統と合理性の間の新しい習慣を生み出しています。中国人の友人が強く「我请!(私がおごる!)」と言ったら、その好意を素直に受け入れ、次回は自分がおごる。そうやって相互理解と信頼関係が築かれていくのです。
【今日の中国語フレーズ】
今天我请客 (jīntiān wǒ qǐngkè) 今日は私がおごります
你太客气了 (nǐ tài kèqi le) そんな遠慮しないで(ありがとうの意も含む)
下次一定让我请 (xià cì yīdìng ràng wǒ qǐng) 次は必ず私におごらせて
那我们AA吧 (nà wǒmen AA ba) それじゃあ割り勘にしよう
我发红包给你 (wǒ fā hóngbāo gěi nǐ) 紅包を送るね(後で送金するね)